「ブラインドライフを明るいものに」
10代の頃は、目が悪くても困ることはほとんどなかった。
20代の頃は、今の病気が診断されたが受け入れられず、目に良くない海遊びに興じてどこか反発していた。
30代になって少しずつ見えかたが変わり、仕事を辞めて盲学校に入り三療の資格を取得した。
40代になり、病気が少しずつ進行するのを実感する傍ら、休暇を利用して様々なところへ遠出を図り、危険に直面しながらもたくさんの人に助けていただいた。
そして50代。ほとんど見えなくなった今は、安全に外出できるスキルを身につけたく、自立支援ホームの門を叩いた。
こんな流れで自分の視覚と折り合いをつけながら過ごしてきましたが、いざ、ホームに飛び込むと「翌日目を覚ますと視力がなくなっていた」というような方に出会い、並々ならぬ決意と努力、ひたむきな姿勢に心打たれ、訓練に取り組む気持ちを押し上げてもらえたと感謝しています。気持ちの切り替えも大変だったのではと思うのですが、訓練をご一緒した当時の方々は皆、明るくて前向きでした。
前途を悲観することよりも、夢や目標を持って訓練に励むことができたのは、できなくなってしまったことができるようになった喜びと自信が、今後の生活に明るいものをもたらしてくれたおかげではないかと、今では確信しています。
白杖を正しく使うことができれば、転落や激突など、危険を回避して安全にどこへでも単独で歩けるようになります。私は失敗が多かったですが、危険を知るためにはある程度は監督の下での失敗は不可欠だったと思います。どんどんチャレンジして場数を増やせば、ただの白い杖が「魔法の杖」と化し、ひとり旅も楽しむことができるでしょう。退所して半年後には、杖から「四輪駆動のラブ(盲導犬)」に変えて、今では可愛いパートナーと外出三昧の日々を過ごしています。
文字の読み書きができなくなった今では、音声機器と点字が大いに役にたちます。パソコンやアイフォンが使えると、通販でお買い物が楽にできたり、読書も調べ物も自在に。点字はちょっと大変ですが、覚えていくと楽しいし、テプラのようにラベルをこしらえれば、物が片付いて探し物が格段に減りました。入所の人たちは競い合って点字の勉強を頑張っていたのが思い出されます。
日常生活においては、いろんな知恵袋を授けていただき、家事の不便さが解消され、円滑に様変わりするのがとてもおもしろいです。お裁縫に関しては私の場合、見えていた時より綺麗に仕上げることができてびっくり!
触覚・感覚などの感覚訓練は、気分転換も兼ねて楽しく習得できます。その中で、卓球の時間もあるのですが、退所後、選手として名を馳せる猛者が何人もいらして、生き生きとプレーする姿はとても若々しく、羨望の眼差しで見てしまいます。
私は仕事をしながら週2~3回の通所でしたが、しばらくぶりに学校に通うような気分で、楽しいものでした。入所の方々は、まるで合宿のような雰囲気でしょうか。
近くに仲間がいることで心強く、ただ今現在勉学に励む人、新たに資格を取得してステップアップしたのちに職場復帰した人・・・。人生を切り開いていく仲間からたくさんの刺激とエネルギーをもらいながら、私も日々向上を目指しています。
ご指導くださる職員の皆さんもとても親身にサポートしてくださるので、安心して訓練に取り組むことができました。退所後も、いつでもあたたかく支えてくださいます。困った時も丁寧に対応してくださいます。
夢や希望を失いかけて閉じこもりがちな日々をお過ごしならば、ぜひ、一歩踏み出してみてください。不可能を可能にするあんなこと、こんなことがざっくざく♪家の相棒(盲導犬)が「ここ来てワンワン」と手招きしていますよ。