神奈川県総合リハビリテーションセンター

障害者支援施設 七沢自立支援ホーム

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利用者の体験談

「仲間たちに励まされ」

沢田 実雄(平成15年~16年入所)

ぼくは、只今70歳。3年前、平成15年6月10日に両眼とも見えなくなってしまった。暗闇の中に放り出され、これからどうして生きていこうかと戸惑い、心が締め付けられる思いで落ち込んでいた。
 はじめは多くの人達が訪ねてきたが、その足も遠のき、悶々としていた。その年の9月6日に七沢ライトホームで一日体験入所が開催されることを知って、ものは試しと、妻と知人のガイドで出席した。そこで、歩行・感覚・日常訓練がどのようになされるのかを知り、それにパソコン・卓球などもあることが分かった。音声パソコンは、よく伺ってみると、音声で分かり、少しずつやれば、ぼくにも出来るかもしれないと感じた。それから、入所の部屋・食堂・トイレ・浴室などを紹介された。宿泊施設は畳(現在はベッド)の4人部屋が5部屋ほど並んでいる。全盲のぼくが、こんな場所で共同生活はとても出来そうもないと思った。通所で訓練するコースもあるが、なおのこと無理と感じた。やれやれ帰宅して考え込んでしまい、数日間が経過したころ、ライトホームの歩行訓練の職員の方が我が家まで訪ねて来てくださり、そのご親切に感激してしまった。
 家でじっとしていても仕方がない、ぼくもこれからは第二の人生が始まるのだ、過去を引きずっていては駄目だと悟り、ライトホームに入所したいと気持ちが傾いた。「ええい!当たってくだけろ」だ。思い切って手続きをとり、入所の日を待った。
 11月4日が入所の日と決まった。まさに、清水の舞台から飛び降りる思いである。それは、ぼくにとって真っ暗なジャングルに分け入っていくようなもので、これこそ暗中模索である。部屋の片隅が、ぼくの居場所であった。初対面の方に「はじめまして、どうぞ宜しく」と挨拶したら、優しい言葉が返ってきた。職員の方々も親切に対応して下さり、廊下・部屋のレイアウトをひとつずつ覚えていった。それから、ぼくの一日のスケジュールがテープで知らされ、訓練が始まった。最も大事なのは歩行訓練であろう。人の足音・話し声・空気の変化を察知しながら、白杖を頼りに歩く。暫くして、屋内から屋外訓練となった時は嬉しかった。中庭の風は心地よい。小鳥のさえずり・木立のそよぐ音を楽しみながら訓練を受けた。
 ぼくにとってパソコンの操作は苦労したが、少しずつ積み重ねるうちに何とか分かるようになってきた。これは根気がいった。感覚・日常訓練と進み、卓球(STT)も付き合えるほどになったのである。これは軽い動きなので良い運動になった。
 ぼくの住まいが平塚にあり、七沢よりバスで、本厚木で乗り換えると我が家まで帰れる。毎週土曜と日曜は自宅に帰れたことは幸いであった。
 今、考えると14ヶ月の訓練は多くのことを学ぶことが出来た。ジャングルには宝物が沢山落ちていた。何よりも増して、入所者とのコミュニケーションが、ぼくを力づけてくれたのである。年齢、男女を問わず、皆さんが明るく前向きで進んでおられる姿に励まされた。そして、退所後もOB会の方達との友情が暖められている。パソコンのEメール友達とのやり取りは楽しい。
 ぼくは親切な職員の皆様方と、良き仲間に出会えたことに感謝している。

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