神奈川県総合リハビリテーションセンター

障害者支援施設 七沢自立支援ホーム

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利用者の体験談

未来への帰り道

柳澤 真

私は、2023年1月にこの施設に入所しました。

見え方は全盲です。

その頃の私の訓練に対する意欲や気力はほぼ0に近い状態からのスタートでした。

1年3か月という七沢劇場が幕を開けたのです。

訓練は大きく分けて、歩行、パソコン、タブレット(スマートフォン)、点字、日常、感覚に分類されます。

歩行訓練は、白杖の正しい使い方から始まり、誘導歩行、施設内の歩行、施設外、信号や交差点の横断、駅周辺や人込みの中での歩き方、公共交通機関(バス、電車)の安全な乗り方、駅員誘導の依頼など、多岐にわたって行います。

私が一番苦労したのは、頭の中で地図を描き、東西南北の位置を把握して訓練士の方からの指示で目的地へ行くというものでした。

35歳にもなって半べそかきそうなほど大変なものでした。

いかに目に頼っていたか、、、を痛感しました。

歯を食いしばって乗り越えた今となってはいい思い出です。

パソコンは、音声ソフト(PC TalkerやNVDAなど)を用いて、基礎的な内容(キータッチ、ネット検索など)から実用的な内容(Word、Excel、メールなど)を訓練用パソコンで学ぶことができます。

テキストがとても分かりやすく、優秀な訓練士さんのお陰で、入所当初、パソコンの起動ボタンすら知らない状態だった私ですが、自信を持ってこれからの生きていくうえで大切なツールとなるレベルまで習得することができました。

タブレットは、主にスマートフォンの訓練になります。こちらも音声ソフトを用いて、日常生活で必要なスキルを身につけることができます。

これは、私が入所して1番感動したことで、見えなくなったことで諦めていた、電話を掛けることはもちろん、メール、LINE、音楽や動画を楽しむ、ネットショッピングなどが、見えていたころと同じくらい扱うことができるようになるのです。

ぜひこの感動を味わっていただきたいです。

点字は、その名の通り、6つの点で言葉を表したものです。

皆さんも普段、生活するうえで点字表記を目にしたり、触れた経験はある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

あの文字の大きさを読めるようになるまで、いくつかの段階があります。

まずは、我々利用者の中で、「麻雀牌」と呼んでいる指2本分ほどの特大サイズから始まり(このころが一番楽しく学べます。)、徐々に文字サイズが小さくなっていき、日本で用いられる縦4.7ミリ、横2.1ミリというサイズを読む訓練となっていきます。

読みがある程度読めるようになると、点字の書きが始まります。日常生活の中で、点字を書けるようになると、ふとした時にメモを残したり、衣類や書類整理、家の生活用品にタグ付けできたりと、より実用的に点字を扱うことができます。

日常訓練では、目に頼ることなく安全かつ安心して生活するためのすべを学びます。

便利グッズの紹介や、安全動作の習得、裁縫、料理、掃除の仕方など生きるうえで必須となる技術や知識を楽しみながら学べます。

また、私は退所直前に編み物でネックウォーマーと膝掛けを仕上げたのですが、そういった創作活動も担当の訓練士さんと相談しながら、やりたいことを積極的に取り組むことも可能です。

感覚訓練は、視覚以外の知覚機能の向上を主とした訓練です。

指先だけで見本と同じものを製作したり、パズルを組み立てたり、LEGOでヘリコプターなどの難易度が高いものを作ったり、点線で描かれた漢字を触察だけで読み取ったりと、脳トレのような感覚で入所当時とは比べ物にならないほど目以外の感覚を研ぎ澄ますことが可能となります。

そのほかにも、サウンドテーブルテニスという、視覚障がい独自の卓球や、世界で一つだけの箸を作ったり(私はこれにドはまりして5膳も作っちゃいました)、陶芸作品を作ったり、みんなで囲んでヨガをしたり、心理といわれる時間では専門のカウンセラーが常駐して不安ごとがあるときは相談できるといったように心身ともに健康に七沢での生活を送れる環境がこれでもかというほど充実しています。

そして、私が七沢で特に人生観が変わった訓練が、体育訓練でした。

視覚障がいに関連する様々なスポーツを通して体を動かす喜びを知ることができました。

もともと体を動かすことが大好きだった私は、見えなくなったことで運動、まして楽しんでスポーツができるなんてもう二度とすることはないだろうと諦めていました。

それが、体育科の素敵な訓練士さんとの出会いから、もう一度、自分の体と向き合うことができ、陸上競技で全国優勝するまで運動機能を高めることができました。

陸上競技は、これから私の生き甲斐となり、大きな自信となることでしょう。

1年3か月の入所期間で、かけがえのない出会いを多く経験することができました。

一生付き合っていきたいと思える方々との出会いがここ七沢劇場で私を彩ってくれた何よりの宝物です。

『障がい』は、不自由ではあるけれども、不幸ではない、と私は考えます。

もちろん、目が見える人生が選べるならば、そちらを選ぶでしょう。

しかし、この見え方は私が生きている限り、なくなることはありません。

人生を共に歩んでいくほかないのです。

障がいを受け入れて、たった一度の私が主人公である人生を豊かにしていくために、考え方ひとつです。見えないくらいどうってことない。

できないことを数えていた1年3か月前の私はもうここにはいません。

この七沢での日々が私を大きく、力強く変えてくれました。

私はこの春から三療資格(あんま、マッサージ、針、灸)を取得するため、進学します。

七沢に来れたことで、将来かなえたい目標も見つけました。

もう一度、生きる気力と希望を与えてくれたこの施設に心から感謝しています。

さぁ、今日はなにができるようになるだろうか。

あなたも、あなただけの七沢劇場を作り上げてみませんか?

 

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